第8回 危うくないか!修繕積立金改定プラン その1

2018.01.11
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新年明けまして、おめでとうございます。
読者の皆様並びにご家族の今年一年のご多幸、ご無事をお祈りいたします。

私は年末に体調を崩して医者の御厄介になり、家族に迷惑と心配をかけました。それでも、30日になんとか我が家恒例の忘年会を開催することができたのは幸運でした。
場所は地元小山市のイタリアンで、「ラ・ルーチェ(0285-32-7522)」という私と妻がお気に入りのお店です。旬の食材を使用したパスタや薄い生地のピッツアがおいしくて有名ですが、おまかせオードブルでは本場イタリアの家庭料理を味あうことができて、家族は大喜びでした。
特に娘のパートナー2人は「こんな美味しい店は東京にもあまりありませんよ〜」などと口を揃えて言いつつ忘年会を盛り上げくれました。また、一連の私のコラムも読んでくれていることがわかり、驚きましたが、気遣いに感謝、感謝の日となりました。

今回は新年にあまり相応しくないかもしれませんが、お金の話、マンションの修繕積立金をテーマと致します。また、気合いが入りすぎて長文となってしまいましたので、2回に分けさせて頂きます。それというのも、昨年或るマンションの30年間の修繕積立金の改定計画を見せて頂き、愕然とし義憤を覚えた感情を今日まで引きずっているからです。

マンションを購入し区分所有者になると、毎月、管理費や修繕積立金を管理組合に納めることになります。管理費は、マンションの設備点検や共用部分の清掃、共用部分で使用する水道光熱費、管理員の人件費等の「日常の管理」に充当されます。日々のマンションライフを快適に過ごすための必要経費です。年間にかかるトータル費用を部屋の広さを加味して戸数で割って、月割りしたものが一般に管理費とされます。

これに対して、修繕積立金は、マンションや敷地の美観の維持、共用部分の修繕工事費用に充当します。竣工から30年という長期間にわたって想定される計画修繕(大期修繕工事を含む。)の年間計画や予算を組んで、その予算総額を賄えるように割り出し、各区分所有者が負担するものをいいます。ですから、修繕積立金を適正な金額で安定的に積み立て、滞納等のリスクを排除し適正に管理していくことが、マンションの「将来に備えた管理」を行っていくことに繋がるのです。

そこで、国土交通省は専門家チームの英知を集め「修繕積立金に関するガイドライン」をつくり、大規模修繕工事等の際に区分所有者に一時金を徴収することが起きないように、金額の目安となるものを分譲会社や購入者に提示しました。専有面積1㎡に目安金額を掛ければ算出できるようになっています。

国土交通省が提示した専有面積当たりの修繕積立金の目安額

(ケース1) 
マンションが15階未満で5.000㎡未満の場合       
平均値218円/㎡        事例からの幅165円〜250円/㎡

(ケース2) 
マンションが15階未満で5.000〜10.000㎡未満の場合   
平均値202円/㎡        事例からの幅140円〜265円/㎡

(ケース3) 
マンションが15階未満で10.000㎡未満の場合       
平均値178円/㎡        事例からの幅135円〜220円/㎡

(ケース4) 
マンションが20階以上で㎡に拘わらず         
平均値206円/㎡        事例からの幅170円〜245円/㎡
                     (1か月当たり)

併せて、国土交通省は金額を5年〜7年きざみで変更される「段階的増額方式」ではなく、30年間均等に積み立てる「均等積立方式」が望ましいと明確な指針を提示しました。このガイドラインが発表されて以降、デベロッパー(分譲会社)は修繕積立金の額を最低でもガイドラインの事例幅におさめる、若しくは、平均値に近づけることが最低限のルールとなりました。主要な分譲会社は、段階的積立方式を採用する場合であっても、金額の改定幅をなだらかにし、改定回数を少なくして、なるべく均等積立方式に近づける傾向になっています。その背景には、業界をリードするプライドやマンション購入者における永住意識の変化があると思われます。

また、ガイドラインの設定の効用は、修繕積立金の根拠となる長期修繕計画の精度向上にも繋がりました。自分たちが積み立てる金額で、本当に30年間のマンションの維持修繕費を賄えるのか、リアルな長期修繕計画が求められたのです。

ガイドラインが業界に浸透していくそんななかで、昨年引渡された都内のマンションの相談を受けたのです。私が問題にしているマンションの基本情報と修繕積立金改定案は以下のとおりで、腹立たしい理由はガイオドラインが提示する目安額と事例幅を比較して頂ければ一目瞭然です。

<都内35戸のマンション>
港区
2017年引渡し
15階未満
5.000㎡未満
1戸当たり最多専有面積81㎡
〜分譲業者が規約に盛り込んだ段階的増額計画〜
<1〜5年目の修繕積立金⇒13.000円(160円/㎡)> 
<6〜10年目の修繕積立金⇒19.000円(234円/㎡)> 
<11〜15年目の修繕積立金⇒37.000円(457円/㎡)> 
<16〜30年目の修繕積立金⇒55.000円(679円/㎡)>  

都内の一等地にあるマンションに拘わらず、修繕積立金の額は国土交通省が提示した平均値(218円)を大きく下回り、かつ事例幅の最低額(165円)にも及んでいません。6年から10年目で事例幅にはおさまりますが、11年目以降及び16年目以降は額が突出して高くなっています。購入者が目を奪われがちな当初10年間を意図的に抑制して、結果としてそのツケを11年目以降及び16目以降に支払う「建付け」になっています。

購入者が従前に住んでいた賃貸マンションの家賃と比較して、分譲マンション入居後の負担が重くならないように見せて、購入者が分譲マンションに手を出しやすくする。こういう販売ありきの見え見えの段階的増額改定計画に「危うさ」を感じるのは、私だけではないはずです。

私はこの「危うさ」を感じるのが二度目です。
私が住宅営業になりたての頃、住宅のほしい方は住宅金融公庫から融資を受けるのが一般的でした。公庫に人気が集中した魅力は、低金利と他行ではまねのできない返済方法にあったのです。それは「ステップ償還(ゆとり返済)」といい、当初5年間は、金利のみを返済し元金は返済しない方法です。25年の返済計画だとしても、5年間は元金を返済していませんから、実際は20年で元金を返済するようなもので、6年目以降の返済金額は1.7倍、11年目以降は2倍を超えました。緩やかでも確実な景気上昇と終身雇用、定期昇給が前提の一種の金融商品で、リスクヘッジとは最も遠いところにあるものと言えるでしょう。

これを官民あげて販売に当たりました。住宅会社では、住宅の取得はまだ早いと考える若年層に頭金ゼロと「ステップ償還」を強調する戦術(青田刈り)がとられ、ながれ作業のように住宅が売れました。当然に住宅ローンの延滞が発生し、保証会社の厳しい催促、取立ての果てに任意売却をすることになりますが、売却してもローンが多大に残ってしまう債務超過の物件が続出しました。ちなみに、ステップ償還は傷跡と悪評判を遺して、平成12年販売中止になりました。当時、購入者にステップ償還利用の「危うさ」や元金の残高シミレーションを丁寧に説明して、購入者のライフプランを一緒に考えた営業マンは少数であったと思います。

マンション管理士・行政書士白寄和彦事務所
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