第11回 管理会社との関係 その2

2018.02.12
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昔を懐かしがる管理業界の諸先輩は、最近マンション管理の本業ではなかなか利益がでないと言います。

その背景には、管理会社の資格や業務を厳しく監督し、消費者の保護を目的にした「マンション管理適正化法」が施行され、組合と管理会社との業務委託契約の自動更新が認められなくなったことが影響しています。

この法律によって、委託契約を更新してもらうためには、業務内容が変わらずとも、理事長に前もって契約の内容、金額、期間(1年)などの重要事項を説明する必要が生じました。また、組合に不利益となる従前と異なる内容、例えば委託料の値上げや管理のスペックダウン等が契約に含まれる場合は、組合員全員を招集して「重要事項説明会」を開催することが義務付けられたのです。

更に、最終的に管理委託契約の更新は、組合の最高意思決定機関である総会の決議事項で、毎年総会に議案として上程されるわけですから、組合員は否応なく委託契約を意識せざるを得なくなります。管理会社の業務は適正に行われているのか、組合が支払っている業務委託料は自分たちのマンションの管理仕様に見合った妥当なものなのかを改めて検討するきっかけとなります。

こうして、マンション管理適正化法の施行は、自動更新という管理会社に多分に都合のよい慣例を改めさせ、管理業務委託契約を組合員にとって身近な存在にさせる目論見どおりの結果を生みました。現在では、管理会社の側から契約条件の変更を求めたり、業務委託料の値上げを申し入れることはめっきり少なくなりました。「はい、わかりました」と提案に回答をしてくれる管理組合はなかなかありませんし、そうすることが結果的にやぶへびとなり、管理会社は業務委託料の削減や管理会社のリプレイスに繋がるリスクを恐れるからです。

今もおそらく先々も、管理会社の体力を奪いつつ収益を下げていくであろうと思われるのが、フロント担当社員による上記①のうちの管理組合運営の支援・補助業務です。総会・理事会の運営支援・補助がこの業務に当たります。最近とみに、管理組合からフロント担当者のスキルのレベルアップを要求されたり、彼らの資質を問われることが多くなったと感じます。また、彼らが求められる業務内容は以前とは比較にならないほど増大しつつあるのが現状です。

これは総会・理事会の運営補助業務の「支援・補助」という言葉のあいまいさに起因しています。本来であれば、新たに個別的な補助業務が発生した場合、組合に追加業務として承認してもらい、相当の費用を請求することができます。

しかし、あいまいさ故に、新たな業務は管理組合にとっては都合よく補助業務の一環として拡大解釈され、管理会社は多少の抵抗を示しつつも無償で引き受けざるを得ない。このような構図で、彼らの無償の支援・補助業務は確実に増えていき、管理会社は人事面及び収益面で非効率な経営を余儀なくされていきます。

紙数に限りがありますので、新たな無償の支援・補助業務のうち、会社や担当者にとって特に負荷の大きいものを紹介します。

1、理事会の下部機関として組織される複数の専門委員会に出席して、理事会同様の補助業務を行います。開催日程の調整や専門委員会委員長との事前打合せ、招集通知の発送、議事録案の作成が主な業務となります。

2、フロント担当者のスキルや経験の不足を理由に、直属上司や建築技術者が理事会に常時出席して担当者の業務を補完することを要求されます。

3、理事会が開催する各種居住者向けイベント、例えばコミュニティ形成を目的としたクリスマスパーティや防災訓練等の企画及び運営を管理会社が実質的に主導します。

4、管理会社における建物・設備管理業務は、建物や設備の保守・点検をし、その状況に応じてメンテに関する助言・提言を行うこととしています。しかし、マンションの工事に瑕疵がある場合やアフターサービスの内容が不十分であるときに、管理会社は、本来交渉の当事者となるべき理事会の補助業務として、または理事会を代理して分譲会社との交渉に当たることを求められます。

5、理事会の補助業務として、管理組合が任意で加入する自治会との懇親を図り、自治体が企画するイベントに代理参加します。

これは支援・補助業務の範疇ではありませんが、管理員業務の一環として解釈され、高齢居住者の部屋を定期的に巡回する見守りサービスを管理員に課したマンションがあるそうです。もちろん、様々な配慮が組合になされ、そして交渉の末に管理会社が無償を受け入れたのだとは思いますが、1人の管理員で充足できるのか、任を果たせるのか、2人体制になった場合の収益面は?と心配してしまいました。

管理会社は、諸々の事情が重なり、不採算ギリギリ若しくは赤字覚悟の業務委託料で契約せざるを得ないことがあります。その場合、管理組合側も管理会社の厳しい状況を十分に把握していて、何か別の方法で報いてやりたい。そこで、しっかり儲けてもらい、永続的に良いサービスを受けたいと思っているはずです。逆に管理会社が契約の更新を断ってきたとき、不採算ギリギリのマンションの業務を担ってくれる管理会社が他にあるかどうかわかりませんから。

私は、管理組合と管理会社が当初のWIN-WINの関係に戻るためのツールとして、リフォームに代表される専有部分サービスを考えています。組合は管理会社に報いてあげるべきときは報いてあげる、管理会社に儲けてもらうべき所は儲けてもらうというのが、私の提言です。

リフォームをどこの会社が請け負うかなど預かり知らないはずの管理組合が、管理会社に受注してもらえるよう敢えてPR活動を行います。PRといっても、もちろん管理組合ができることには限界があります。総会や居住者向けイベント、マンションの掲示板、組合員に配布する文書、組合のホームページでの活動が中心となるでしょう。

また、管理会社がマンション内で相談会等を開催するときは、節度を保ちつつ便宜を図ってあげましょう。これらを工夫活用して、管理会社がリフォームを受注することのメリットを部屋の所有者に発信することは、組合にとって大きな負担となるものではありません。寛容と柔軟で対応できるものです。

管理会社も「言うは易く行うは難し」などと言って傍観していては、道は開けません。「イチゲンサン」のリフォーム会社では真似のできない「連携」のメリットを自信たっぷりに発信していきましょう。

最初は何を始めたのかと疑問視されることがあるとは思いますが、実際に事例が増えてきてメリットが証明されれば、これが管理組合独自の「仕組み」となって定着し、経年と共にマンション内では普通のこと、合理的なことと組合員に認識されていくのではないかと思います。

マンション分譲会社を含む住宅業界は、将来の人口減少などの要因から、リフォーム等のストック事業を見直し経営の柱に育てようとする動きが顕著になってきました。そのため、分譲会社は系列下にある管理会社がリフォーム事業を担えるように設計・現場スタッフの大幅なシフト変えを進めています。なかには、リフォーム専門の設計事務所と伍して競えるようにデザイナーを配置する会社が出てきたくらいです。

本気度を感じます。

分譲会社は、従前の管理会社のイメージを一新して、本業の管理業務を中心にリフォームを含めた住宅ストック事業全般を行える事業体に変えていきたいのだと思います。

リフォーム等の専有部分サービスをツールとして、管理組合と管理会社が互いの立場を分かりあえる関係を構築するという「私の提言」が、管理会社に身を置く者の単なる理想論とか過度の思い入れと言われないときが遠からずやって来ることを期待します。

マンション管理士・行政書士白寄和彦事務所
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