第17回 特別の影響に怯むな! その1

2018.12.15
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今年もご愛読ありがとうございました。

平成30年は個人事務所を開設し、マンション関連の他に思っても見なかった意外な仕事に出会うことができました。ご支援に感謝いたします。

札幌の方から依頼された家系調査・ルーツ探訪の仕事はワクワクドキドキの連続で楽しませてもらいました。それと、11月からはホテルの防火管理者の業務も担うことになりました。依頼人の期待に応えられるようキッチリ仕事していく所存です。

どのマンションも一度は高圧一括受電の導入を真剣に検討したことがあるでしょう。

御承知でしょうが説明すると、電気の自由化の一環として電気事業法が改正され、一括受電業者と呼ばれる事業者がマンション全体の電気を一括で電力会社から高圧受電して、それを各世帯や共用部分に低圧変換して供給(販売)する形式です。

一括受電業者は、電力会社から高圧・一括で購入することで個別低圧の購入よりも安く購入し、自分で所有する受変電設備の費用や儲けを引いた額で各世帯や共用部分に電気を供給します。システムとしては、共用部分のみの電気代を削減する方法と共用部分と専有部分を併せて電気代を削減する方法があります。

デメリットもあります。一括受電方式はすべての世帯が同一の受電業者から受電することになりますから、区分所有者全員の同意が必要となります。また、事業者はマンションに受変電設備等の設置など初期投資をすることもあり、一括受電契約は10年程度解約及び料金の変更ができません。

実は、管理組合がこの高圧一括受電の導入の手続きを行うことを契機に組合が、または積極派の区分所有者が導入に反対をした区分所有者に損害賠償を求める訴訟が全国で頻発しているのです。

札幌にある500戸超のAマンションでは、管理組合が数年前から専有部分へのマンション高圧一括受電の導入を検討していました。理事会は満を持して専門委員会を立ち上げたり、説明会やアンケートを数回にわたり実施したり、各組合員への情報提供もしっかり行うなど丁寧な作業を積み上げてきました。

その後、臨時総会において高圧受電導入及びそれに係る経費5500万円を修繕積立金から支出し、毎年の維持・保全にかかる費用200万円を一般会計予算から支出することを特別決議によって決議しました。本来区分所有法的には「形状および効用の著しい変更を伴わない」のですから、普通決議で可能と思われますが、やはり専有部分に関わることであり、また拘束期間が長く区分所有者全員の理解が必要となることを鑑み、特別決議にしたのだと斟酌します。もちろん導入に伴う管理規約の改正も特別決議で可決しました。

実際にこの高圧一括受電のシステムを導入するためには、全世帯が電力会社との間の既存の低圧の電気供給契約を解約し、管理組合(一括受電事業者)との一括契約に変更するための同意書を提出する必要があります。Aマンションでは2名の区分所有者が賛同せず同意書は最後まで提出されませんでした。

区分所有者が同意書を提出しない根拠となる法律が区分所有法の第17条2項です。

17条 共用部分の変更は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

二人の区分所有者のメインとなる主張はこうです。

① 高圧一括受電導入時工事の際に約3時間程度の停電があること、3年に一度の定期点検時に約2時間程度の停電があることは、専有部分の使用に特別の影響を生じ、区分所有法第17条2項に抵触するので、決議には2名の区分所有者の承諾が必要となるはずである。

② 元来ライフラインの供給先は各区分所有者に決定権があり、マンションであっても多数決で強制される性格のものではない。

理事会及び専門委員会は重ねて二人の説得を試みますが、同意書は提出されず、わずか500分の2の反対で結局組合は導入を断念せざるを得ませんでした。

普通の管理組合の場合、これまでの努力が報われず健闘を称えあいながらも、シラーと無力感が役員たちを支配し、全区分所有者の同意書の提出というハードルの高さを改めて痛感し、反対者が必ず持ち出す17条2項「特別の影響」に怯んで尻尾を巻いて散会するのが落ちですが、このマンションは違っていました。

マンション管理士・行政書士白寄和彦事務所
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