第20回 マンションでパワハラ その2

2019.01.13
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愚にもつかないクレームは、管理会社の社長の保身が為の発言も重なって、侵略すること火の如くあっという間に大袈裟なものになっていきました。重役は騒動の真の原因を十分に承知しているので気の毒がって同情してくれたそうですが、M管理員には辛い日々が長期に続きました。

当初管理会社の社員たちは、騒動をマンション全般に対する社長ご夫妻の無知に端を発し、引っ込みのつかなくなったパフォーマンスと軽視し、それほどかからず、うやむやに終息していくだろうとタカをくっていました。

しかし、M管理員を含むすべての管理員さんが能力や資質を疑わられ、職務怠慢と一方的に決めつけられ、自分たちが長期に培ってきた管理員の教育・指導マニュアルが全否定されるに及んで、この度を過ぎた理不尽なクレームはクレームの域を超えた「パワハラ」なのではないかと気付いたのです。

それも、人間愛を企業理念とする親会社の社長夫妻が加害者で、子会社の末端で真っ当に業務に従事する管理員さんが被害者になる、こんなパワハラなんて前代未聞のできごとだと。

職場の「パワハラ」の定義が、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え又は職場環境を悪化させる行為をいうのであれば、これは誰の目から見てもパワハラそのものです。

社長ご夫妻は、そもそも何のために自社が販売しその後の管理面でも多くの自社社員が関与することがわかっているマンションに進んで居住するのでしょう。

マンションの在るエリアは確かに人気で、不動産系の会社や商社系の会社が販売するマンションが林立しています。その中で、マンションは建物外観的にも平凡で特徴もなく、かつ、このエリア内では立地的にも共用部分のサービス(夜間警備員さんもいない)においても希少価値の際立った存在とは思えません。

日々責任の重い仕事に携わっておられる地位の人ほど、「家に帰れば」、会社という組織から解き放たれて、自分達のことが知られない環境で静謐にプライベートを満喫することの方がそれこそマンションライフに適しているのではないでしょうか。

それとも他社のマンションでは実現できなくて、自社のマンションでなければ創出できない居心地の良い生活というものがあるのでしょうか。

おそらくお金には全く不自由しいない富裕層に属するAご夫妻なのですから、マンション選びに際しては、他人を巻き込まず、「住まう」ことの本質や価値をご家族でただただ純粋に追求すればよいのではないかと私は思うのですが。

うがったものの見方をする社員は、ご婦人のあの日の管理事務室への来訪を別の角度で憶測していました。

家具等の粗大ゴミを廃棄するには、コンビニ等でゴミ処理券を入手し、マンションで指定された粗大ゴミ置き場に指定された時間に自分たちで運ばなければなりません。搬出後の手続きは管理員さんや業者が行いますが、その一連の前作業に関してはどの居住者であろうと平等に管理員を個人的に手伝わせることはできません。

ご婦人の本音は「椅子の廃棄処分すべての作業を管理員たちに代行して欲しかった。そこのところをM管理員に察して欲しかった。」のではなかったか。

パワハラ騒動は数か月後ようやく終息しました。

この騒動を経て、管理会社の社員及び関係者が確信したことが一つあります。

「こんなことは甚だ迷惑至極で、二度と御免だ。」ということです。

その対策として、まず重役が心ならずもご婦人宅へ月一度の参勤交代を行いガス抜きと牽制に努めることになりました。そして、他のマンションでも管理員が組合員から長時間の叱責や繰り返し暴言を受けるようなことが発生していないか一斉アンケートの実施を決定し、パワハラの根絶をスタートさせたそうです。

M管理員にかけがえのない日常が戻りました。

今では全管理員と共に従前どおり元気に業務に精励しています。

管理員さんたちにとっては、これしきの愚にもつかない

パワハラで、自分たちの誇り高き業務に対する

ロイヤルティーが揺らぐことはありません。

マンション管理士・行政書士白寄和彦事務所
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